井上ひさしの蔵書が収まった「遅筆堂文庫」とは/山形・川西町 |
とうほく唯物論【3月号】 |
今回、話を伺った阿部孝夫さんは現在、地元の小松郵便局局長という肩書きを持つ。ちなみに小松は川西と合併する前は単独の“町”で、井上ひさし氏が誕生したのも小松町。“こまつ座”の名前の所以である。
「実は4月から遅筆堂文庫・川西町図書館・フレンドリープラザの運営を、NPOが委託を受けることになりました。開館20年という節目でもありますし、せっかく“井上ひさし”という全国ブランドもあるわけですから、待ちや守りのスタンスではなく、大いに攻めて他の市町村などにも良い影響や刺激を与える存在になっていけたらと考えています」。
阿部さん自身、職を辞して臨む覚悟の新しい展開では、井上ひさし氏の要望も反映しながら、例えば開館時間を長くしたり、あえて雑談や話し声などの“音”も適度に響き渡るような空間づくりを行ったりと、図書館の既存の概念の見直しや打破にも取り組む方針だ。
「先生のご自宅から何度も何度も本を運んでいた時期、先生を囲んで雑談したんです。その何気ない話題が盛り上がって、ついには20年続いている“生活者大学校”の開催という現実につながった。雑談がカタチになったんです。どんなに小さなことでも、周りにいる人を巻き込んで大きく膨らんでいくことがあるように、この空間を、そういうエネルギーも生み出せる環境や場所にしていきたいんです」。
遅筆堂文庫には、井上ひさし氏直筆の『堂則』が掲げられている。その一節には“我等は日本のドン・キホーテたちである”と書かれている。
「先生らしい表現だと思います。私自身は“どんなに大それた目標を持ってもいいから、それを信じて、目の前のことに情熱をもって淡々と立ち向かっていけ”と解釈しています。裏を返せばそれは、今までやってきたことは間違っていないという激励の声でもある。だからこれからも変わらず自分たちを信じて淡々とやっていきますよ」。川西町への春の訪れに合わせるように、ドン・キホーテたちの新たな挑戦と歩みが始まろうとしている。
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