


開山から1400年を経た今日でも山に寄せる信仰は昔のままに、変わることなく庶民に受け継がれている深い祈りと修験の山。
過去、現在、未来の三世の浄土を指す出羽の里の三山は、山をめぐることで参拝者自らが死と再生を体験する
という庶民信仰が現在に息づいているのです。
「古来、この地域の人たちは信仰に厚く、里山に暮らし、死後その魂は近くのハヤマに留まり、その後33回忌を経るとオクヤマに上ると考える、その信仰と習俗を大切にしてきました」。
斎藤一さんはこう話をはじめました。
羽黒山はハヤマ、月山はオクヤマ、山中他界の考え方は1400年の魂を重ねて庶民の暮らしに精神の文化となって根付いたのでした。

「この地域の子どもたちは、ある年齢に達すると祖父、父に連れられ三山登拝をします。大人になる大切な儀礼として、どの家でも代々受け継がれてきました」。
待ち構えたかのように地元、そして全国からも三山を参る人々が訪れるのは夏。7月1日に月山神社本宮で山開祭が行われると神山を駆ける修験、修行の道が開かれるのです。

「三山を開山した崇峻天皇の第一皇子である蜂子皇子の厳しい修行を今に伝える、羽黒派古修験道の山伏修行は現在も厳行されています。とくに8月26日より9月1日までの7日間斎行される『秋の峰入り』修行は、地元の若者の申し入れが尽きることなく、そして1400年の伝統と羽黒派古修験道の厳しい修行をそのままに、後の世代にも守り続けて欲しいと願う気持ちがあります」。
昔からこの地域に流れている社村一致のこころを祭りを通して守っていきたいと斎藤さんはよびかけます。
そして三山権宮司の宮野直生さんは「伝統行事のなかから庶民に信仰が生まれたのです。地域の人が一丸となってさまざまな意識の発生をしていくことで、おのずと行事にかかわる大切さに気づきます。古来より育まれてきた精神の文化を後世にきちんと残すことが私たちの努めでしょう」と口を固く結びました。
今の時代、仕事を一週間休むことは厳しいこと。でも、地元が伝統文化とその精神を守ることの重要さに皆が気づいて、と。




