白神山地には、ブナの遺伝資源の保存を目的とした“奥赤石遺伝資源保存林”もある。写真の背後に広がるのは、青森県西津軽郡鯵ヶ沢町の奥赤石ブナの保存林。
緩衝地帯(核心部分の周辺)であっても、目の前は青い空と緑の森だけで一面の風景が構成される。ふと“縄文時代と同じ景色だろうか”という思いが頭をよぎる。
何かを学ぶ気持ちで山と向き合う。
永井さんがNPOとして「白神山地を守る会」を発足したのは1993年(平成5年)。以来、時代は“環境”や“エコ”へと動いてきたが、守る会がさまざまな取り組みを始めてから変わってきたこととは何なのだろう。
「地球温暖化が叫ばれる中、ここ数年、異常気象が増えてきています。南極の氷が溶けたとか、北極がどうしたとか、そういうニュースを見るたびに誰もが自然破壊の脅威を感じて“何かしなくちゃ”と考えるんだけど、一方で生活が快適になればなるほど、その裏側で地球環境を壊してることにも気づいてきている。じゃあ何をしなきゃいけないかというと、京都議定書が定める6%、1999年レベルに戻すと言っても具体的に何をすればということが、わからないんじゃないかと(笑)。でも木を植えた人たちの中には、常に省エネを考えるようになったとか、毎年、苗木を植えていく大切さを知ったとか、ちょっとしたことでも自分の身の回りの現実として具体的なアクションを起こしているという話を聞くんです。そういう意味でこの10年あまりは、自然や環境に対する人々の意識が変わり始めた“気づき”の時期だと思います」。
当然のように、白神山地を訪れる人口も年々増加の一途を辿っている。しかし反面、白神山地に入山しようと付近までタクシーで乗りつけ、ハイヒール姿で世界遺産に臨もうとする女性も少なくないという。
「物見遊山の気分で来て“これしかブナがないの?”なんて言う人もいますが、訪れる人以上に、間に入る旅行業者やツーリストたちにも問題があると思います。やはり山に入るのであれば、自然遺産から何かを学ぶ気持ちをもって入るという仕掛けをしてほしいと。白神は人類共通の財産であり、これだけのブナの原生林を次の代にどう残すべきなのか、そういうクエスチョンを持ちながら入ってきてもらいたいですね。関わる人や訪れる人がみんな、そこまでのレベルになって初めて、かけがえのない環境に対する“本来の気づき”になると思います」。

