「今後、白神自然学校では山との共生生活のための細かな道具作りとか、面白い仕掛けとか“こんなことができるの!”って、楽しい遊びも教えていく予定です」。
美しく、また愛おしい気持ちにさせられるブナの幹の表面。大木であれば、もう250年あまりもこの地球の歴史を見てきたことになるという。
人と自然が共生していくということ。
世界遺産に登録された白神山地には、勝手に入ることができない。しかし、例えば山と密接な暮らしを送ってきた人やマタギなど、昔から人間と自然の共生はあったわけだ。
「現在、白神山地は入山届けを出すと誰でも入れますが、そう簡単に入れる山ではない。また鳥獣保護区にも指定されています。それ自体は悪いことじゃないけど、ここでマタギが行ってきた伝統文化の熊撃ちだけには、特別鑑札権を与えていいと思うんです。間引きをしないと熊が増えて、人とのバッティングが出てくる。適度に間引きすることも逆に生態系を守ることにつながるし、それが今まで当たり前のようにやられてきたわけで、生態系のバランスが保たれていたわけですから」。
つい先日、国会を通った「エコツーリズム推進法案」の提出の際にも、永井さんは党派を越えた関係各所やWWF(世界自然保護基金)からも意見を求められた。その際に現在、修正を加えるべき箇所と何年後かに修正できる汎用性をもたせることを提案したという。
「草案には地元の人の関わりが、まったく触れられていなくて。本来のエコツーリズムってのは、やっぱり地元の人がエコツーリズムの大事な主役であることを入れるべきだと考えています。その関わりなくしてエコツーリズムは成り立たないんです。マタギもそうですしね。例えば山菜をとることと、山に木を植えること、そのお互いの関わりの意識を明確にすることが大切だと。植林をやることによってお金も入ってくるけど、そうすると木は大事だという強い意識が入るでしょ。そしてもともと持っている技術も生かされてくるから、今後もずっと地元の人は本当にかけがえのないものとして関わっていく。外から来る人も大事だけど、地元の意識がそこにきちんとしていなければ、山は守れるもんじゃないんですよ」。
終始、穏やかな口調で話す永井さん。しかしその視線には、揺るぎない強い意思が込められている。
「自然を守ることは巡り巡って自分を守ることだと、自然を大切にする意識を気づかせていきたいんです。そういう機会に接することが今、子どもも大人も少なすぎると感じています。多くを語らずとも、森に入ればそれは分かります。こういう素晴らしい森に来れば、何かを感じない人はいないはずですよ」。
■取材協力
永井雄人氏
NPO法人「白神山地を守る会」
■参考文献
『白神 ブナの森博物誌』(白神山地を守る会)

