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牡蠣殻を開けると中には見事な身が。「大きいでしょ。日本だとワタがある白い身の部分を食べるって感じだけど、フランスでは結構、周りの外套膜の部分が好まれるんですよ。そして身自体も薄くほっそりしていた方が人気ですね」。我々取材チームも漁船の上で取れたての牡蠣をいただいた。当然、全員が“今まで食べた中で最高の牡蠣”と絶賛。独特の匂いやクセがなく、澄んでいながらも濃い味わい。

「森の海を慕う会」が植林活動を行っている舞台は、気仙沼湾に注ぐ大川の源流である岩手県の室根山(むろねさん)だ。室根山を豊かな広葉樹の森にすれば、フルボ酸を含んだ水が大川に流れ込み、やがて河口の汽水域で海水と交わり、良質な植物プランクトンを育み、結果的に良質な海産物を育んでいく。それが“漁師が山に木を植える”理由なのである。畠山さんがこの活動を始める前、昭和59年(1984年)に訪れたフランスでは懐かしさにも似た光景を目にしたという。

「牡蠣養殖をやってる人間にとって憧れの地だったフランスに行った時、養殖をやってる海岸を訪れて驚いたんですが、コンクリートで固めた護岸がとても少なかったんですよ。それで、自分が小さな頃の三陸のリアスの海を思い出しました。潮が引いてできたあちこちの潮だまりでは、小さなカニやエビなどの生き物がうごめいていたんです。“自分も昔はこんな海で遊んだぞ”って嬉しくなってね」。

フランスでは、リヨン、アビニョンと下るローヌ川の河口、ボルドーを経たジロンド川が太平洋と交わるアルカッション湾など、牡蠣養殖の著名な地を訪問。さらにナントを流れるロワール川を訪れた際には、地元の名物料理を前にして、驚きが確信に変わったという。

「ウナギの稚魚のパイ包みが出てきたんですよ。ウナギって言ったら、私が水産学校に通っていた頃は、海にたくさんいたウナギをつかまえて売り、そのお金を定期代とか学費の足しにしていたものでした。だからウナギは私の分身みたいなものなんです(笑)。その後ロワール川の流域をさかのぼってみたら案の定、広葉樹の森が広がっていた。森の存在が、川の生き物や沿岸の海の生き物を育てているんだと強く思いましたね」。

きれいな海であることを象徴するウナギは、畠山さんが30代の頃からその姿を見せなくなったこともあり、いつしか“ウナギがいる海に戻す”ことが明文化されてはいないものの「森の海を慕う会」活動の目標となっていった。

「だから数年前にウナギの姿を見たときにはかなり嬉しかったですね。ウナギは、森と川と海をつなぐ指標生物だからこそ余計に“ウナギさえ戻ってくれば”って思いも強かったし。やっぱりね、昔のきれいな海という基準が脳裏にあるから“あの頃のように戻さなくちゃ”って思うんですよね。基準として比較するものを持つのは大切なこと。自然環境だけでなく、それはあらゆる物事にも通じるはずです」。

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「牡蠣の森を慕う会」が中心となり、海に注ぐ川やその上流の森を守ろうと、1989年(平成元年)から始まった落葉広葉樹の植林活動「森は海の恋人」運動。好例の植樹祭では、山の中に大漁旗がはためく珍しい光景を目にすることができる。

畠山さんを始めとした「牡蠣の森を慕う会」のメンバーは、室根村の住民たちと手を携え、子どもたちに教えながら植樹を行っていく。植えられる樹種はブナ、コナラ、ミズナラ、カツラなど、この辺りの山にもともと自生していたものが中心。

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